脂質って油でしょ?体に悪そう!というイメージがあるかもしれませんが、脂質は重要なエネルギー源であるとともに、重要な栄養成分の一つで、細胞膜や生理活性物質の構成成分にもなります。
一方脂質をとりすぎると肥満、メタボリックシンドローム、心血管系疾患をはじめとした生活習慣病のリスクをたかめることになります。
栄養の話をしようと思ったら、脂質の話をしないとはじまらない!ということで脂質編スタート!
Contents
脂質とは
まず脂質って何?
油には常温で液体のあぶら(油)と固形のあぶら(脂)があります。これをまとめて油脂とよんでいます。この油脂は脂肪酸とグリセリンという分子からできています。この油脂や脂肪酸、グリセリン、コレステロールなどをあわせて脂質とよんでいます。
農林水産省HPより
ということです。
脂質には中性脂肪、コレステロール、リン脂質(レシチンなど)、脂肪酸などがあります。
そしてその働きですが、
*脂質の働き
・細胞膜の構成成分
・エネルギー源
・脂溶性ビタミン(ビタミンA.D.E.K)やカロテノイドの吸収を助ける
・コレステロールは細胞膜の構成成分のほかホルモンやビタミンDの前駆体となる
となります。ただの肥満のもとではないんですね!
脂肪酸の分類
脂質の構成要素である脂肪酸にはたくさんの種類があり、この種類を知ることが大切になります。今回はこれがメイン!
*また不飽和脂肪酸には異性体があり、トランス型とシス型似2つの種類があります。ほとんどはシス型。
脂肪酸は大きく飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3つに分類されます。
多価不飽和脂肪酸は生体内でほとんど合成されないことから必須脂肪酸と呼ばれ、ω-3(n-3)系とω-6(n-6)系に分類されます。
*飽和脂肪酸
代表的な脂肪酸;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸
代表的な油;ラード、バター、ココナッツオイル、パーム油
飽和脂肪酸は高LDLコレステロール血症のリスク要因の一つであり、心筋梗塞をはじめとする心血管系疾患、肥満の危険因子。
*一価不飽和脂肪酸 ω-9系
代表的な脂肪酸;オレイン酸
代表的な油;オリーブオイル
油から取り入れるほか、体内でも合成されます。
一価不飽和脂肪酸が生活習慣病の予防にどの程度寄与しているかは明らかになっていません。飽和脂肪酸に比べれば心血管系疾患の予防に寄与する可能性があるようです。肥満予防の観点から過剰摂取には注意が必要です。
*ω-3系多価不飽和脂肪酸
代表的な脂肪酸;αリノレン酸、EPA、DHA
代表的な油;αリノレン酸;えごま油、アマニ油 EPA、DHA;サバ、イワシなど青魚
αリノレン酸はヒトの体内で合成することのできない必須脂肪酸の一つです。αリノレン酸は体内に入ったあと代謝されてEPA、DHAとなります。欠乏すると皮膚炎などが発症します。心血管系疾患のリスクを下げる(血管を拡張させ血流をスムーズにする)ことが報告されています。
EPA;中性脂肪低下作用が報告されています。
DHA;認知機能改善効果が報告されています。ω3系脂肪酸の中で唯一脳に取り込まれ、脳の活性化に関わると言われています。
ω3系脂肪酸には 生活習慣病予防、認知機能改善効果あり!!
*ω-6系多価不飽和脂肪酸
代表的な脂肪酸;リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸(γ-リノレン酸とアラキドン酸はリノール酸の代謝物)
代表的な油;大豆油、コーン油、ベニバナ油
リノール酸はヒトの体内で作ることの出来ない、必須脂肪酸の一つです。日本人が食品から摂取するω-6系脂肪酸の98%はリノール酸と言われています。適量のリノール酸は心血管系疾患を予防する(血中コレステロールを低下させる)可能性があると言われています。過剰摂取は血液凝集作用や炎症促進作用を持つアラキドン酸の生成を促進させてしまいます。
*トランス脂肪酸
不飽和脂肪酸には異型体がありシス型とトランス型があります。天然にも存在しますが、工業的に液状の油を固形に変える時に副産物として生じます。トランス脂肪酸は飽和脂肪酸よりもLDLコレステロール/HDLコレステロール比を大きく上昇させ、心血管系疾患のリスクを高めると報告されています。肥満やアレルギー性疾患についても関連が認められています。
WHOは心血管系疾患リスクを低減し、健康を増進するための目標基準として、トランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるように提示しています。日本人の場合は約2gになります。しかしトランス脂肪酸はそもそもの摂取量が少ないため飽和脂肪酸よりも健康への影響は少ないと考えられています。
また最近では食品事業者の努力によりトランス脂肪酸濃度がこれまでよりも低い食品が発売されています。
代表的な食品;マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、市販の揚げ物、フライドポテト
・脂質は人体に必要な栄養成分
・適量の不飽和脂肪酸は健康上プラス!
・過剰な飽和脂肪酸、トランス脂肪酸は健康上マイナス!
各種脂肪酸の性質をふまえて、どうしたらいいの?
*飽和脂肪酸・トランス脂肪酸の過剰摂取は注意!
人間はエネルギーを脂質、炭水化物、タンパク質からとっています。総エネルギー量のうち脂質から得るエネルギーの割合を”脂質エネルギー比率”とよび、この脂質エネルギー比率が高くなると肥満やメタボリックシンドローム、心血管系疾患のリスクが高くなるとされています。
目標量は総エネルギー量の20%以上30%未満となっていますが、2019年には日本人成人男性の約35%、成人女性の約44.4%で脂肪エネルギー比率が目標量を超えていることが示されています。
脂肪エネルギー比率が高くなると飽和脂肪酸やトランス脂肪酸のとりすぎにつながる可能性があります。健やかな食生活を送るためには飽和脂肪酸、トランス脂肪酸という食品中の一成分にだけ着目するのではなく、脂質そのものを控えることを優先すべきだと考えられています。
とはいえ、
・動物性脂肪やパーム油などに多く含まれる飽和脂肪酸のとりすぎ→血中LDLコレステロールが増加→心血管系疾患のリスクが増加
・トランス脂肪酸のとりすぎ→血液中のLDLコレステロールが増加しHDLコレステロールが減少→心血管系疾患のリスクを高める
ということが示されているため脂質そのものを控えた上で、脂質の種類にも配慮は必要になります。
*ω3系・ω6系比も大事!
ω6系のアラキドン酸から生成されるプロスタグランジン、ロイコトリエンなどのメディエーターは炎症性の生理活性を示し、ω3系のEPAやDHAから生成されるレゾルビン、プロテクチンなどのメディエーターは抗炎症性の生理活性を示します。ω3系脂肪酸とその抗炎症性代謝産物はω6系アラキドン酸からの炎症性物質の産生とそれらがひきおこす炎症反応を抑制すると言われています。
なんか色々難しいけど、ω3はω6が引き起こす炎症を抑えるってこと!
そのためω3系とω6系の比(ω6/ω3)が心血管系疾患の発症に重要で、ω6/ω3比の低い食事が心臓病、炎症のリスクを低減すると言われています。ω6/ω3比の具体的な数字がわかりませんでしたが、厚生労働省が示す日本人の食事摂取基準から考えると4−5といったところでしょうか。分かり次第追記します。。。
農林水産省HPより
また現代人の食事はω6系に偏っています。ω6系の主成分であるリノール酸の過剰摂取はアトピーや喘息、生活習慣病などのリスクを増加させるといわれているため、ω9系の油(オリーブオイル)をω6系(サラダ油)の代わりに使用することがすすめられています。
ω3系を使えばいいじゃない!と思うかもしれませんが、ω3系は熱に弱く、酸化しやすいため加熱調理には向いていません。そんな加熱調理には加熱しても酸化しにくいω9系オリーブオイルがすすめられています。
おわりに
まとめると
・脂質は人体に必要な栄養分であるが、過剰摂取は健康被害を引き起こすため、まずは現代人は脂質そのものを控えることが必要。
・飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の過剰摂取は心血管系疾患のリスク因子となる。
・不飽和脂肪酸の中でもω3系多価不飽和脂肪酸を摂取しよう。(ω3はω6が引き起こす炎症を抑えるから)
・加熱料理にはオリーブオイル、加熱しないときは魚油、アマニ油、エゴマ
ということです。各種脂肪酸を含む油は上記を参考にしてください。思いついたら追記していきます。
色々考えると食事も面倒になってしまいますが、慣れると面倒ではなくなってくるはず!
次回?今回の内容を生かして具体的な食材についての記事をアップしたいと思います!